数奇な運命

西の博士課程に進んだ先輩が帰省していた。
「いやー車が多いね、こっちは」

たった2週間しかまだ通学していないため、その大学の事はあまり理解していない用だった。

印象的だったのは
「西もここも両方居心地が悪いんだ。ここに愛着があるわけでもないし。」

24年という歳月をずっとここの土地で過ごしてきて、さぞかし移るのは寂しかろうと思っていた矢先の言葉である。

「研究をやりたかったら、何もないけど西のあの大学がいいと思う。ここは惑わされることが多すぎる」

研究職になるひと、それを生業とする人というのは、いくら博士課程という学生の身分でも、やはりプロ意識が芽生えるのだろう。

それを人生観の第一においていれば、安心できる故郷も居心地が悪くなるのだろう。
「こんなんじゃダメだ」と。

数奇な運命を感じてしまう。